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2024 02.06

【イベントレポート】『電音部 ULTRA EXPO 2024』

2024年1月6日、パシフィコ横浜 国立大ホールにて「電音部 ULTRA EXPO 2024」が開催された。この「電音部 ULTRA EXPO」とは、電音部に登場する全エリアが大集合する一大イベントである。2023年3月25日には、『電音部プロジェクトNEXTVISION』の一環として「電音部エリアチェーン」なる制度を導入した電音部。これにより既存のアキバ、ハラジュク、アザブ、シブヤ、そしてカブキの5つに、シンオオクボ、シンサイバシ、イケブクロ、ネオトウキョウの4つのエリアが加わった。エリアの数は合計9つになったわけだが、それらが一堂に会するのは、今回がはじめての試み。この「電音部 ULTRA EXPO」には、24名のキャストの出演、そして電音部にゆかりのある15名のトラックメイカーのDJ出演も発表されており、開演前には、多くのファンが期待に胸を膨らませていた。

 

会場であるパシフィコ横浜 国立大ホールに着くと、まずギャラクシーグルーヴフロアの様々なサークルの出展ブースが目に入ってきた。その数はなんと40にもおよび、その内容も電音部楽曲のリミックスCDや、イラスト本、ステッカー、アクリルスタンド、アクセサリー、レポート本、評論誌、SS集、小説などの販売や、スマホARエフェクト、VJシステムの展示など本当に多岐に渡る。他の公式のイベントで、こういった二次創作の販売をすることはほとんど見られないが、この光景は「電音部」というプロジェクトが独自のファンメイドコンテンツポリシーを持ち、柔軟に受け入れていったことの現れだと言える。

 

またその他にも、「電音部 ULTRA EXPO」には12社の企業がブースを出展。会場には、電音部のグッズはもちろん、コラボフード、電音部との関係性も深いヴィアライヴのブースや電子楽器メーカー、ローランドの機材体験ブース。はたまた花王のバブのフォトスポットも。また、ネビュラポイントでは、MikaPikazoをはじめ、きあと、つづつ、アキバエリアの蔀祐佳(日高零奈役)のサイン会も行われた。その様子はEXPOというタイトルの通り、まるで博覧会のよう。これが電音部というプロジェクトが目指す「新たなカルチャーとの遭遇体験」のひとつの形でもある。

 

そして14時になると、メインステージであるサンバーストステージが開演。この日のトップバッターを務めたのは、シブヤエリア「帝音国際学院」。健屋花那(鳳凰火凛役)とシスター・クレア(瀬戸海月役)の2名がステージに現れ、なんと1曲目から新曲「熱電爆散」をプレイ!さらに、チバニャンが手がけた、シブヤエリアきってのぶち上げ楽曲「爆裂タウマゼイン」へと繋ぎ、序盤から一気にフロアを大爆発させる。この日のシブヤは、DJプレイにプラスして歌唱を入れていくというスタイルで、矢継ぎ早に曲を披露。容赦なくフロアを一気に沸かせていく。さらに、ここで「新曲です!」と宣言し、シスター・クレアがマイクを握るとステージには、アキバエリアの天音みほ(東雲和音役)が登場。この日、初披露となる「Holy Moly」をデュエットで披露すると、大きな歓声が沸いた。シブヤエリアは最後に、「新曲がもうないなんて誰も言ってねぇんだよなぁ」と健屋が静かに煽り、この日3曲目となる新曲「Keep it simple」をプレイ。「最強」の名前にふさわしい強力な重低音を轟かせ、シブヤエリアは自分たちの時間を終えた。

シブヤエリアからバトンを受け取ったのは、電音部としてのリアルイベントには初出場となる、シンオオクボエリアのユニット、Bellemule。中村花音(LIco役)と、杉本希花(Yuna役)のふたりがステージに現れ、まずはDANCE SHOW CASEでスタート。そこから「NDA」、「Who am I」といったガールクラッシュ楽曲とキレッキレのパフォーマンスで観客を魅了する。彼女たちのストロングポイントは、ダンススキルの高さにある。その手足の長さを活かしたダイナミックな振りは、これまでの電音部ではなかなか見られないものであり、新たな風が確かに吹いていた。MCでは緊張も感じられたが、パフォーマンスになると表情は一変。「Mirror Mirror」、「ココ・シャネル」といったハイカロリー楽曲で、フロアをぶち上げつづけた。

 

「電音部 ULTRA EXPO 2024」には、各エリアのキャストだけでなく、コンポーザーもDJとして登場するのがポイントのひとつ。メインステージにDJアクトとして現れたのは、電音部ではハラジュクエリアの楽曲を多く手がける、Moe Shop。ハラジュクの持ち味である、KAWAII楽曲を軸に独自のエレクトロサウンドを展開。また途中には、自身が手がけた「Tokyo Bug Night」のプレイ中に、ハラジュクエリア、長谷川玲奈(犬吠埼紫杏役の)が登場し、ステージで踊るというサプライズも。最後は、再び「Tokyo Bug Night」を高速BPMでプレイ。そして、次の出番のハラジュクエリアの小坂井祐絵(桜乃美々兎役)、大森日雅(水上 雛役)、長谷川玲奈の3人も顔を出し、最高にキュートな世界を提示していた。

Moe ShopのDJの流れでそのままステージへと現れたハラジュクエリアは、初手からハラジュクエリアのなかでも屈指のキラー・チューン、「Distortion」でスタート。歪んだビートとキュートなウィスパーヴォイスの混ざり合いが、脳を直接刺激していく。ハラジュクエリアもDJ+歌唱のスタイルで、ガンガンカットインするプレイを展開。また今回の披露された楽曲は、普段の原曲ばかりではなく、リミックス楽曲もふんだんに放り込まれており、いつもとは違うアレンジのハラジュクが妙に新鮮で、いつものライブアクトでは観られない新たな一面を見せていた。また、ハラジュクもシブヤエリアと同様に、新曲「Put a puzzle」、「Infinitie colour」を披露するサプライズも。kawaiiやキラキラを客席全体に振り撒いた、とにかく自由で元気なチームハラジュクだった。

少しのインターバルを挟み、次にステージに登場したのは、イケブクロエリア、池袋電音部から、和久野愛佳(阿沙薙 帯役)、矢吹 真央(雅賀 烈賀役)、中村さんそ(雫來叉 手毬役)の3人。バックDJにはnaePi-YOがブースに立ち、3人それぞれソロ曲、「光波打Reflection」、「作戦A~Operation A」、「Hz254」を連続で披露。しかし、全く耳馴染みがなかったこの楽曲たちに、フロアは若干戸惑い気味。それもそのはず。彼女たちが披露したのは、なんとこの日が初披露の新曲だったのである。全くの未発表楽曲をこの大舞台にぶつけるという気合いに、ただただ驚かされた。最後は全員で「BUKURO ELECTRO [KAH Remix]」を披露。イケブクロエリアはとんでもないポテンシャルを感じさせ、ステージを後にした。

続く、シンサイバシエリア心斎橋演芸高校は、おなじみのお面を付けて登場。定位置につくと、かっこよくお面を取るという流れでLico(虎丸笑万役)、Mone(東海林桃々子役)の2名が現れたのだが、残るNoa(飴村音凛役)の姿が見当たらない。そこで、客席全員で「Noaちゃーん!」と叫ぶと、なんとNoaは客席後方から、ポケットティッシュを配りながら、颯爽と登場したのである。このコミカルさはまさに、シンサイバシエリアの真骨頂。シンサイバシエリアはそこから、サビのフレーズが一度聴いたら忘れられない「心斎橋エイリアン」をパフォーマンスし、底抜けの明るさで祭りを展開。さらにシブヤエリアの「CHAMPION GIRL」を3人でカヴァー。さらには、シンサイバシはシンオオクボからBellemuleを召喚。Bellemuleのダンサーとしてのスキルの高さと、コミカルな歌詞の越境コラボで観客を楽しませることに成功していた。インターネット上での顔出しはしない方針とのことだが、ぜひ彼女たちのライヴを一目見てほしい。きっと一気にファンになってしまうはずだから。

ここまで、メインステージであるサンバーストステージのレポートを行なってきたが、トライライトステージの盛り上がりがすごかったことも、ここで言及したい。Sho Okada&Shogo Nomuraのコンビでスタートしたこのステージは、びばえいち、Capchii、Qreme Logic、フロクロ、いるかアイス、ハレトキドキ、市瀬るぽ、ウ山あまね、Aiobahn、piccoと、錚々たるメンバーでその世界を繋いでいた。その選曲も本当にバラエティーに富んでいて、新たな曲や新たな魅力を知るきっかけにもなっていた。

サンバーストステージのDJアクトの2人目はケンモチヒデフミ。ケンモチヒデフミは、自身のユニットである水曜日のカンパネラをはじめ、ano、戦慄かなの、Mori Calliopeなど、自身の手がけた楽曲を軸に独自のワールドを展開。そのどれもがキャッチーかつフロア映えしており、それぞれの楽曲としての強さを感じさせた。またアザブエリアの「いただきバベル」をAiobahn remixからの自身が手がけたオリジナルへ繋ぐなど、遊び心も満点。最後は「麻布アウトバーン」で締めようとすると、アザブエリアから秋奈(黒鉄たま役)、小宮有紗(白金 煌役)のふたりが登場。ケンモチヒデフミがいるブースの隣に立ち、フロアを盛り上げた。ケンモチヒデフミは秋奈と小宮のふたりに感想を聞かれ、「ウルトラ楽しかったです」と返答。それに対して「それでこそ、港白金女学院生の生徒ですわ」と褒められ、激照れしているケンモチヒデフミの姿が妙に印象に残った。

 

ケンモチヒデフミが去ったあとは、小宮有紗曰く、「アザブエリアの高尚な時間」がスタート。こちらもハラジュクチームと同様、「Make Some Noise [Toki Remix]」、「No More [GUCCHO Remix]」「Catch a Fire [Vanille Altzy BTLG]」といったリミックスを軸にした選曲で、終始ラグジュアリーな世界を展開。煌びやかで美しさを感じさせながらも、強力な低音が会場に響く。「いただきバベル [Aiobahn Remix]」では、ふたりでのチャーミングなダンスを披露する場面も。もちろん、アザブエリアも新曲を用意。アザブとしても電音部としても新境地となる、エレクトロ・スウィング調の楽曲「Swing Along」で、フロアを自由に踊らせた。

アザブエリアの煌びやかな世界の後に現れたのは、ネオトウキョウエリア、東京電脳学園より苺りなはむ(ねねるねる役)、yAmmy(八波零音役)、ぁぃぁぃ(叶ヒカリ役)の3人。しかし、その姿はシルエットのみが映し出され、その姿の全貌は見えない。しかし、「Introduction」、「DIVE」、そして未リリースの楽曲「TOKYO WAVE」を次々に繋ぎ、確かなスキルとパフォーマンスを見せつけていく。楽曲としてはシブヤエリアのような力強いEDMが特徴的ではあるが、カブキエリアのようなダークさもある。途中のMCもなく、その不穏な気配を残しながら、最後まで自分たちのスタイルを貫き通し、「mumin」ステージを去った。まだまだ謎の多いネオトウキョウエリアではあるが、これから電音部に大きな旋風を巻き起こすチームであることは間違いないだろう。

ネオトウキョウエリアの不穏な空気を引き継いだまま現れたのは、カブキエリア真新宿GR学園より、吉田凜音(大神纏役)、SONOTA(安倍=シャクジ=摩耶役)、をとは(りむる役)の3人。まずは「禁言」、「AGARE」でバッチバチのラップをかまし、客席を一気に自分たちに世界に引き込んでいく。2曲を歌い終えると、ここでカブキエリアの3人によるMCへ。吉田凜音が「私たちカブキエリアは電音部では、ヴィラン的な立ち位置なんですけど、普段は結構良いヤツですよ」とアピールし、観客を笑わせた。そのあとはそれぞれのソロ曲パートへ。まずは「肝臓から声出す準備できてるー?」と煽り、をとはの「焼ケ鮭」からスタート。この治安の悪さこそがカブキエリアならでは。そこからカブキエリアは、さらにSONOTAが和のテイストのヒップホップ楽曲「稀びと」をいう新曲をパフォーマンスし、持ち味である狂気を感じさせるステージングで魅了した。さらにそれに連なって、吉田凜音が「纏も新曲やります!」と「Tasting!!」をドロップ。纏らしい堂々なるステージングを見せた。そこからカブキエリアは3人全員で「Crush」を披露したのだが、途中吉田が「歌詞間違えたー!!」と言うハプニングも。しかし、その後のリカバリーが抜群で、トラブルをもろともしないステージングが最高だった。歌詞の間違えをちゃんと自己申告するカブキエリアはやっぱり良いヤツかもしれないと思わされる瞬間だった。ちなみに、「Crush」と「Siren」をパフォーマンス中のVJ映像は、をとはが自ら作ったとのこと。カブキエリアは、SONOTAが自身の役柄をイメージした楽曲を作成するなど、彼女たちのクリエイティビティも素晴らしいチームでもあり、その広がりはまだまだ加速していきそうだ。

DJとしてのアクトの最後は、TAKU INOUE。ブースに登場するや否や、観客たちの「待ってました!」という大歓声があがっていた。彼は、電音部が提示する「新しいカルチャーへの遭遇体験」、そして今回のイベントのキャッチフレーズ「全部やる」を体現するかのごとく、あらゆるIPの垣根を超え、その世界を繋いでいく。その姿はまさにグルーヴの王様だった。2023年はMidnight Grand Orchestraでの活動や、anoのアーティスト活動を支えるひとりとして、レコ大と紅白に出演したりと大活躍が見られる彼だが、DJとしてのオーラと、フロアを沸かせるパフォーマンスはまさに絶品。TAKU INOUEは最後に、アキバエリアの新曲である「PLAY/PAUSE」をドロップ。ステージに現れたアキバエリアの3人とともにハッピーな世界を創出していた。

 

サンバーストステージに最後に現れたのは、アキバエリアの蔀祐佳(日高零奈役)、天音みほ(東雲和音役)、堀越せな(茅野ふたば役)の3人。まずは、アキバアリアの単独ライブで披露した「桃源郷コンダクター」でスタート。同じ横浜でもパシフィコを中華街の空気で観客を沸かしていく。そこからさらに、ソロ曲のパートでは、「Favorite days」、「シンデレラ・マジック・ステージ」、「メタモルフォシス」と繋ぎ、正統派ヒロイン感を完全にアピールした。そして、アキバエリア3人はさらに新曲として、「Triぴーす✌ひふみふフリーダム」も披露。この「Triびーす✌ひふみふフリーダム」は何度も曲調が変化し続ける楽曲で、聴く人の観客の心をぶんぶん揺さぶるジェットコースターチューンだ。しかし、そのなかにもしっかりとアキバエリアらしさがふんだんに詰め込まれており、新境地でもありながらも、アキバエリアの魅力の拡張という感覚もあった。アキバエリアは最後に「NEW FRONTIER![Tatsunoshin Remix]」をパフォーマンス。その歌は、「これからも私たちは新たな世界を見せていきます」という強いメッセージのように響いた。

これにて、大団円かのように思われた「電音部 ULTRA EXPO 2024」。しかし、ここで終わりではなかったのだ。スクリーンには「NEW AREA」の文字が表示された。そう。ここにきて、新たなエリア、ダイバエリアがお披露目されたのである。さらに、このダイバエリアのプロデューサーが山下七海であることが発表されると、会場からは割れんばかりの歓声が聴こえてきた。発表がおわると、ダイバエリアのDIvermy(MILIA・RARA・RIRI・KONA・YOO)が登場し、ダンスショーケースがはじまった。メンバー5人が、キレッキレのダンスを見せつけていく。それはまさに電音部に新たな風が吹いた瞬間だった。

こうして、6時間以上に及ぶ、電音部史上最大のお祭りは、幕を閉じた。かなりフルボリュームではあったが、来るもの全てを楽しませようという思いがどの出演者にも、ブースにも感じられるイベントだった。電音部はこれからも見るものを驚かせ、もっと楽しませてくれるだろう。電音部が目指す「新たなカルチャーとの遭遇体験」は、まだまだこれからも広がっていくのだ。

 

取材&文:ニシダケン